AI/HPC向けSoCとV93000の持続性
会社はFY2025のSoC用途をコンピューティング/通信95%、その他5%とし、FY2026もAI関連用途を成長の中心に置く。V93000が先端ロジックのデファクトスタンダードという会社認識を、顧客数、高稼働、モジュール/アップグレード需要が裏付けるかを確認する。
AI/HPC・HBMのテスト需要は強い。ただし今回の株価分岐点は「好調の確認」ではなく、FY2026計画を上回る需要の持続性と利益率の質である。
結論 / 投資スタンス
AIアクセラレータ、HPC、先端メモリの需要方向は依然として追い風であり、会社計画もテスタ市場の拡大を前提としている。一方、FY2025 Q4の高利益率には製品ミックスとライセンス収入が寄与しており、FY2026の会社計画は営業利益率44.2%で前期と同水準である。今回、市場が見るのは単なる前年同期比の大幅増益ではなく、テスト強度の上昇が追加需要へ転換しているか、SoC/メモリの両輪が維持されるか、利益率の質がQ4の一過性要因に依存していないかである。
株価は7月28日に10.11%下落し、6月25日の年初来高値35,940円から約29%下にある。期待は一部調整された可能性があるが、検証可能な四半期コンセンサスを取得できていないため、「織り込み済み」の程度を断定しない。決算前の行動は待機(watchlist / wait for proof)が妥当と判断する。
エグゼクティブサマリー
会社はFY2026のSoCテスタ売上を9,995億円、メモリ・テスタを2,010億円と計画。AI関連用途をSoC成長の中心に置き、先端DRAM向けの高性能メモリ・テスタも増収を見込む。
新規テスタだけではない。高稼働の量産拠点で、計測モジュール、既設機のアップグレード、システムレベルテスト(SLT)が増えるかが、V93000の成長の持続性を左右する。
前年Q1は売上高2,637.8億円、営業利益1,239.5億円、営業利益率47.0%と既に高い。前年同期比だけでは不十分で、通期計画の確度、利益率、需給の先行きが重要になる。
会社開示 FY2025通期決算資料・説明会資料・Q&A(2026年4月27日)。数値は特記なき限りIFRS、百万円を億円表示に換算。
期待値バー / 会社計画・実績・市場予想の位置づけ
会社はFY2026 Q1の業績予想を開示していない。本稿では検証できるIFIS等の四半期コンセンサスを取得できなかったため、見かけ上もっともらしい市場予想を作らない。下記は、決算前に存在する確定した比較軸である。
会社開示 FY2025通期決算資料、2026年4月27日。未取得 FY2026 Q1の検証可能な市場コンセンサス、会社の四半期ガイダンス、決算イベントに限定したオプション予想変動率。
過去8四半期のKPI推移
| 四半期 | 売上高 (億円) | 営業利益 (億円) | 営業利益率 | 売上高 前年同期比 | 読み取り |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2024 Q1 | 1,387.3 | 313.3 | 22.6% | — | 半導体サイクルの底入れ前。 |
| FY2024 Q2 | 1,904.8 | 635.3 | 33.4% | — | H2に向け回復基調へ。 |
| FY2024 Q3 | 2,181.5 | 692.7 | 31.8% | — | 需要回復が継続。 |
| FY2024 Q4 | 2,323.5 | 640.4 | 27.6% | — | FY2024通期の最終四半期。 |
| FY2025 Q1 | 2,637.8 | 1,239.5 | 47.0% | +90.1% | AI/HPCを背景に急拡大。 |
| FY2025 Q2 | 2,629.6 | 1,084.8 | 41.3% | +38.0% | 高水準を維持。 |
| FY2025 Q3 | 2,738.0 | 1,135.7 | 41.5% | +25.5% | 売上はさらに拡大。 |
| FY2025 Q4 | 3,280.7 | 1,531.1 | 46.7% | +41.2% | 最適な製品ミックスとライセンス寄与。 |
注:Q2〜Q4の単四半期値は、会社開示の累計値から算出した分析上の計算値。四半期ごとの受注高・受注残は、会社が本レポートの確認対象資料で継続開示していないため掲載しない。FY2025 Q4の利益率について会社は、最適な製品ミックスとライセンス収入が寄与したと説明している。
会社開示 FY2025 Q1、Q3、通期決算資料。FY2024比較値はFY2025各決算資料の比較欄、FY2024通期実績を使用。算出値は端数処理のため資料表示とわずかに異なる場合がある。
事業別の会社計画と見るべき信号
| 区分 | FY2025実績 (億円) | FY2026計画 (億円) | 増減率 | Q1での確認ポイント |
|---|---|---|---|---|
| SoCテスタ | 7,674 | 9,995 | +30.2% | AI/HPC、先端パッケージ、V93000のシステム・モジュール・アップグレードの広がり。 |
| メモリ・テスタ | 1,715 | 2,010 | +17.2% | 高性能DRAM、HBM4以降を見据えたテスト需要、供給制約の有無。 |
| その他テスタ(SLT等) | 805 | 965 | +19.9% | 高い品質保証が求められるHPC・スマホAP向けSLTの増加。 |
| サポートサービス | 442 | 525 | +18.8% | 設置台数増に伴うストック性、稼働率の裏付け。 |
| その他 | 650 | 705 | +8.5% | テスタ以外の寄与と利益率への影響。 |
注:会社開示の売上高区分。メカトロニクス単独の通期数値は、確認した資料では独立表示されていない。「その他テスタ」にはSLT等を含む会社の区分を用いた。受注高・受注残も会社開示範囲を超えて推定しない。
会社開示 FY2025通期決算説明会資料(2026年4月27日)。
株価を動かす5つの重要論点
会社はFY2025のSoC用途をコンピューティング/通信95%、その他5%とし、FY2026もAI関連用途を成長の中心に置く。V93000が先端ロジックのデファクトスタンダードという会社認識を、顧客数、高稼働、モジュール/アップグレード需要が裏付けるかを確認する。
会社は高性能メモリが先端パッケージに不可欠として、メモリ・テスタもSoCと同じ方向で能力を増やす方針。HBM・高性能DRAMの投資が追い風でも、メモリ半導体の供給動向が需要の上振れ・ボトルネックの双方になり得る。
新モジュールは一部項目でデバイス当たりテスト時間を短縮し得る一方、会社は先端半導体の複雑化と生産量拡大により総テスタ需要には影響しないと説明する。チップレット、先端パッケージ、SLTで追加テストが増えることが上振れの鍵である。
FY2025 Q4の46.7%は最適な製品ミックスとライセンスが寄与した。FY2026会社計画は44.2%。Q1の営業利益率が高くても、ライセンスや一時的なミックスに偏るなら、通期利益の再評価には直結しにくい。
会社はFY2026末までに年産5,000台以上、CY2028末〜CY2029に10,000台のSoCテスタ生産能力を目指す。顧客のウェハー能力、先端パッケージ能力、メモリ供給が計画通り拡大するか、同時に自社供給が制約にならないかを聞く。
会社計画の為替前提は1米ドル150円、1ユーロ170円。営業利益への感応度は対米ドルで円安1円につき約40億円の増益、対ユーロで約4億円の減益。Teradyneの結果は同日早朝に判明するが、顧客・製品構成が異なるため方向確認に限定する。
会社開示 FY2025通期決算説明会資料、同Q&A、セルサイド小規模ミーティングQ&A(いずれも2026年4月27日)。為替感応度は会社の財務ハイライト。
外部リードスルー / ただし代替指標ではない
TSMCは2026年Q2売上高402億米ドル、Q3売上高ガイダンス446〜458億米ドルを公表した。AI・先端ノードの強さは、先端ロジックテストの需要環境に対する追い風である。ただし、アドバンテストの受注・売上のタイミングを直接示すものではない。
外部一次資料 TSMC 2026 Q2 results(2026年7月16日)。
SK hynixは2026年Q1でHBMを含む高付加価値製品とサーバーDRAM/eSSDの強さを示した。HBM4Eのサンプル供給も公表している。これはメモリ・テスタの中長期需要の方向を補強するが、テスタ投資の四半期額を示すものではない。
外部一次資料 SK hynix 2026 Q1 results、HBM4E sample release。
Teradyneの2026年Q2決算は米東部時間7月28日16:30(日本時間7月29日5:30)公表予定であり、アドバンテスト発表の約10時間前に確認できる。半導体テストの需給コメントは参考になるが、製品・顧客構成と地域ミックスの差を越えて単純比較しない。
外部一次資料 Teradyne earnings release notice。
決算後の株価反応フレーム
バリュエーションの注意点:7月28日終値25,510円を会社のFY2026予想EPS641.61円で割ると、単純計算で約39.8倍となる。このEPSは会社計画であり市場予想ではない。高い成長期待を織り込む局面では、実績の絶対額よりも「将来の追加テスト需要」と「利益率」の変化率が反応を決めやすい。
分析上の判断 株価反応の条件は会社開示と市場データを基にした事前フレームであり、株価の方向を保証しない。株価・PER相当の単純計算は2026年7月28日15:30時点の市場データと会社予想EPSを使用。
3シナリオ / 数字の創作はしない
株価への含意:高い期待にもかかわらず、利益予想の上方修正と持続性が再評価材料となる。
株価への含意:四半期コンセンサス未取得のため断定しないが、業績が「既知の強さ」の確認にとどまる場合は反応が限定的になり得る。
株価への含意:売上・利益が前年同期比で増えても、将来の期待値が下がれば売られ得る。
決算説明会で確認すべき質問と注目表現
投資判断を変える条件
通期計画の上方修正、またはそれに準ずる需要可視性の改善。特に、AI/HPCの追加テスト、先端パッケージ、HBMの3つが定性的な期待ではなく、出荷・能力・顧客量産の具体例で示されること。
会社計画は維持されるが、強さの根拠がQ4のライセンス/ミックスに偏り、SoC・メモリ・SLTの先行きが具体化しないこと。コンセンサスの検証可能な更新も待つ。
CY2026市場観またはFY2026計画の後退、顧客投資・先端パッケージ・メモリ供給の明確な遅れ、あるいは利益率の悪化が同時に生じること。経営陣の需要言語が「可視性向上」から「不確実性」に移る場合。
取得できなかったデータ・確認待ち事項
出典一覧
会社開示を最優先した。会社開示、市場データ、外部企業の一次資料、分析上の判断を本文中のタグで区別している。市場データは取得時点のスナップショットであり、リアルタイム値ではない。