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Earnings Research / Post-Earnings Deep Dive

アドバンテスト〈6857〉
FY2026 Q1 決算後ディープダイブ

AI推論の需要上振れは、テスト数量だけでなく「テスト・コンテンツとテスト・インサーション」の構造的上昇をどこまで裏付けたか。

決算発表 2026年7月29日 15:30(日本時間)情報基準時刻 2026年7月29日 17:45(日本時間)対象年度 FY2026 = 2027年3月期
Q1売上高
3,674.7億円
前年同期比 +39.3%
Q1営業利益
1,899.9億円
前年同期比 +53.3%
Q1営業利益率
51.7%
前年同期 47.0%
通期営業利益計画
8,460億円
従来比 +34.8%
結論
強気
価格反応・評価は未確定

結論 / 投資スタンス

強気。AI需要の「量」だけでなく、複雑化に伴うテスト強度の上昇が、会社計画の大幅上方修正として数字に現れた。

決算前の中核論点だったAI/HPC、V93000、HBMを含む高性能DRAM、先端パッケージ化によるテスト需要の持続性は、今回の会社開示で明確に強まった。会社は推論AI関連のASIC・CPU・DRAM向けテスタ需要が4月想定を上回るとし、FY2026の売上高計画を1兆4,200億円から1兆7,140億円へ、営業利益計画を6,275億円から8,460億円へ引き上げた。

純利益・EPSの大幅増には約447億円の戦略投資関連の金融収益(主に投資ファンド持分の評価益)が含まれる。従って株価が最も評価すべきはEPSの見出しではなく、51.7%の営業利益率、Q2も51.7%とする会社計画、SoC・メモリ双方の需要上振れである。

エグゼクティブサマリー

今回の決算で確認できたこと、まだ確認できないこと

推論AIが新たな需要軸に

GPUに加え、ASIC・CPU・DRAMの生産数量と複雑性が上昇。会社は、世代ごとに増えるテスト・コンテンツとテスト・インサーションがテスタ需要の重要なドライバーだと明言した。

V93000の優位性を再確認

V93000はGPU、ASIC、CPUなど先端パッケージを採用するAI半導体で幅広い顧客に採用。Q1のSoC売上は2,596億円で、GPU高水準に加えASICが増加した。

収益の質は二層で読む

営業利益率51.7%は良好なミックス、限定的な棚卸資産評価損、固定的な販管費が支えた。純利益はこの営業面の強さに加え約447億円の金融収益で押し上げられた。

会社開示 FY2026 Q1決算説明会ノート、資料、決算短信。

決算前の期待値と実績

コンセンサスとの比較は未取得。会社の旧計画と前年・直前四半期に対しては、営業面が明確に上振れた。

指標FY2026 Q1前年同期前年同期比FY2025 Q4評価
売上高3,674.7億円2,637.8億円+39.3%3,280.7億円四半期最高。Q4比でも増収。
営業利益1,899.9億円1,239.5億円+53.3%1,531.1億円増収を上回る増益。
税引前利益2,340.8億円1,213.6億円+92.9%1,724.7億円金融収益約447億円が寄与。
親会社帰属利益1,747.8億円901.8億円+93.8%1,268.7億円見出しの増益率を本業と同一視しない。
基本EPS241.27円123.14円+95.9%174.30円投資評価益を含む。
営業利益率51.7%47.0%+4.7pt46.7%Q4の高水準を上回った。
ヘッドライン対実力値:純利益・EPSは非常に強いが、一部は営業外の評価益。実力値の軸は売上高+39.3%、営業利益+53.3%、営業利益率51.7%である。

会社開示 2027年3月期第1四半期決算短信、FY2026 Q1決算説明会資料。単位は億円へ換算。

FY2026通期計画と上方修正余地

需要見通しの改善を、売上高+2,940億円、営業利益+2,185億円の上方修正として反映した。

FY2026通期4月計画7月修正計画修正幅FY2025比
売上高1兆4,200億円1兆7,140億円+20.7%+51.9%
営業利益6,275億円8,460億円+34.8%+69.5%
税引前利益6,290億円8,910億円+41.7%+72.4%
親会社帰属利益4,655億円6,600億円+41.8%+75.8%
基本EPS641.61円911.64円+42.1%+75.8%

進捗率の見方

Q1進捗率は売上21.4%、営業利益22.5%、純利益26.5%。Q1後に引き上げられた新計画に対する比率であり、単純年換算は適切でない。

会社が示す後半の姿

Q2売上計画は4,345億円、営業利益2,245億円、営業利益率51.7%。下期の営業利益率計画は47.3%。Q2実行力と下期47.3%が保守的かが上振れ余地の判断材料である。

会社開示 FY2026 Q1決算短信、決算説明会資料。修正幅・進捗率は当サイト計算。

過去8四半期のKPI推移

FY2025の高水準を超え、Q1は売上・営業利益・利益率ともに過去最高。

四半期売上高
億円
営業利益
億円
営業利益率売上前年比読み解き
FY2024 Q21,904.8635.333.4%回復局面。
FY2024 Q32,181.5692.731.8%需要回復が継続。
FY2024 Q42,323.5640.427.6%回復初期の利益率。
FY2025 Q12,637.81,239.547.0%+90.1%AI/HPCが利益率を押上げ。
FY2025 Q22,629.61,084.841.3%+38.0%高水準維持。
FY2025 Q32,738.01,135.741.5%+25.5%高収益が定着。
FY2025 Q43,280.71,531.146.7%+41.2%良好なミックスとライセンス収入が寄与。
FY2026 Q13,674.71,899.951.7%+39.3%過去最高。Q1ライセンス収入は非開示。

会社開示の四半期売上高・営業利益から整理。受注高・受注残は今回数値開示がない。

事業別・用途別分析

SoC、メモリ、周辺ソリューションが同時に伸びた。受注残や製品別リードタイムは未開示。

AI/HPC・V93000・先端パッケージ

SoC Q1売上は2,596億円。GPU高水準に加えASICが増加。V93000はGPU、ASIC、CPUなど先端パッケージ採用AI半導体で幅広く採用と説明され、決算前の主要論点を支持した。

HBMを含む先端メモリ

メモリQ1売上は480億円で、高性能DRAM中心に前四半期比増。HBM単体の売上・受注は非開示であり推定しないが、DRAM向け需要上振れは通期上方修正の理由に含まれる。

テスト強度・SLT・周辺装置

先端パッケージ、高速I/O、電源・熱最適化によりテスト・コンテンツとテスト・インサーションが増えるとの説明。デバイスインタフェースとテストハンドラはテスタ増に連動して増加。SLT単独売上は非開示。

サービス・設置台数の複利

サポートは設置台数増を背景に堅調。FY2026の通期計画はサポート590億円、その他800億円、合計1,390億円。装置販売の増加が将来の保守・インタフェース需要へつながる。

供給能力・リードタイム

能力増強を前倒しし、製造パートナー、重要部材、品質、納期を含むサプライチェーンを強化する。一方、稼働率、リードタイム、受注残、能力の定量値は非開示。

地域・顧客投資

台湾ではハイエンドSoC、韓国ではSoC・メモリ双方、中国ではSoCが増加。特定顧客投資額、先端パッケージ能力、メモリ需給の定量影響は開示されていない。

通期テストシステム売上計画FY2025実績FY2026修正計画前年比
SoC7,674億円1兆2,435億円+62.1%
メモリ1,715億円2,270億円+32.4%
その他システム805億円1,045億円+29.8%
テストシステム合計1兆194億円1兆5,750億円+54.5%

会社開示 FY2026 Q1説明会ノート・資料。前年比は当サイト計算。

EPS品質の点検

営業利益の改善は実質的。純利益の上振れには、再現性を別途判断すべき評価益が含まれる。

営業利益の質

売上総利益率69.5%。良好なミックスと限定的な棚卸資産評価損が寄与。販管費等は656億円で前四半期並み。数量・ミックス・固定費吸収による改善で、営業段階の質は高い。

金融収益・税率

税引前利益には約447億円の金融収益を含み、主に投資ファンド持分の期末評価益。税引前から親会社帰属利益への機械的実効税率は約25.3%だが、評価益の税効果は切り分けられない。

為替・株式数

Q1平均レートはドル159円、ユーロ185円(前年同期146円、162円)。為替寄与額は非開示。基本EPSの加重平均株式数は7.244億株。

結論:「EPSが約2倍」だけでは翌期の収益力を測れない。Q2の営業利益率51.7%と下期47.3%の達成度を優先して追う。Q1ライセンス収入の金額・持続性は非開示である。

会社開示 FY2026 Q1決算短信、説明会ノート・資料。実効税率は当サイト計算。

外部企業からの読み替え

顧客・競合は追い風の確認材料だが、アドバンテストの受注を代替するものではない。

TSMC

7月16日のQ2決算はAI需要を背景とする先端プロセス需要の強さを示した。台湾向けハイエンドSoC需要が強いという会社コメントと方向性は整合する。

主要メモリ企業

会社自身が推論AI関連DRAMのテスタ需要が4月想定を上回ると開示。メモリ企業の設備投資・HBM需給は重要な確認項目だが、各社業績をアドバンテスト売上へ機械換算していない。

Teradyne

Teradyneは2026年7月28日(米国東部時間)にQ2を公表済み。売上高は13.29億ドル(前年同期比+104%)、うち半導体テストは11.22億ドル。DRAMの強さとNAND最終テストの再拡大を背景に、メモリ売上は過去最高となった。Q3売上高ガイダンスは12.0~13.0億ドルで、AI関連需要が堅調とのコメントは、アドバンテストが示したAI/HPC・高性能DRAM向け需要の強さを支持する競合の読み替えである。ただし、両社の顧客構成・製品ミックス・会計基準は異なるため、売上規模や利益率を直接比較しない。

決算後の株価反応とバリュエーション

翌通常取引は未到来。良い決算かではなく、上方修正後の期待値をさらに超えられるかが株価を分ける。

好決算でも買われやすい条件

  • Q2の営業利益率51.7%計画を実行する。
  • 推論AI向けASIC・CPU・DRAMが顧客・地域をまたいで伸びる。
  • 能力前倒しで受注を売上化し、下期47.3%が保守的と見える。
  • テスト強度上昇が一過性の数量増ではないと確認される。

好決算でも売られ得る条件

  • 上方修正後の数値が既に織り込まれ、Q2・下期の追加上振れがない。
  • 純利益増の大きな部分を評価益とみなし、利益率ピークアウトを懸念される。
  • 先端パッケージ・メモリ部材・物流が出荷制約として意識される。
  • 高い評価でAI投資の持続期間への不確実性が強まる。

未取得・確認待ち PTSの検証済み終値、翌通常取引の始値・終値、決算前終値からの変化、PER/PBR・時価総額は情報基準時刻に本レポート用として取得できなかった。具体的な株価反応・バリュエーション数値は掲載しない。

強気・基本・弱気の3シナリオ

株価の分岐は、下期の利益率と供給制約をどう証明するかにある。

強気シナリオ

上方修正後も需要が加速

  • Q2の51.7%を達成・上回る。
  • ASIC・CPU・高性能DRAMが同時に伸びる。
  • 下期47.3%が保守的となる。
  • 投資判断:強気を強化。
基本シナリオ

高水準を維持、利益率は正常化

  • Q2計画を達成、下期は47%台。
  • AIの強さは続くがQ1ほどのミックス改善はない。
  • 追加カタリストが必要。
  • 投資判断:強気維持、追随買いはQ2確認後。
弱気シナリオ

供給・ミックスが期待を下回る

  • 供給制約で出荷が遅れる。
  • 下期利益率が47.3%を下回る。
  • AI需要が少数顧客・短期投資に偏る。
  • 投資判断:強気を撤回し再確認。

決算説明会Q&A・次回確認事項

公式Q&A/トランスクリプトは未公開。次の表現が投資判断を変える。

Q1:上方修正の需要・ミックス・為替・供給能力の寄与は。
注目:「供給制約ではなく需要が主因」「下期も同水準」。為替のみの上振れなら質は下がる。
Q2:推論AIのASIC・CPU・DRAMはどの用途・地域で増えているか。
注目:「広範な顧客」「量産」「テスト・インサーション増加」。少数案件依存なら注意。
Q3:V93000の伸びは台数・構成・先端パッケージ対応のどれか。
注目:「複雑性」「高速I/O」「熱・電源」「ソフトウェア/自動化」。
Q4:高性能DRAM需要と部材・リードタイムの状況は。
注目:「DRAM全般」「継続的」「部材確保」。HBM単体数値は非開示の可能性が高い。
Q5:下期営業利益率47.3%に低下する要因は。
注目:「ミックス」「為替前提」「能力投資」「棚卸資産評価」。一時費用か構造的低下かを分ける。
Q6:約447億円の金融収益の性質と変動可能性は。
注目:「期末評価」「営業外」「再現性なし」。本業EPSと切り分ける。
投資判断を変える条件:Q2で営業利益率51.7%を大きく下回る、下期の供給制約が顕在化する、または推論AI需要が一部顧客・一過性案件に限定されるなら強気判断を見直す。反対に、下期47.3%を上回る持続性とV93000・メモリの広がりが確認されれば、追加上振れ余地が高まる。

未取得データ・確認待ち事項

数値を補完推定せず、未開示・未取得として扱う。

出典一覧

一次情報を中心に使用

  1. 会社開示 アドバンテスト「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年7月29日)。
  2. 会社開示 アドバンテスト「FY2026 Q1 決算説明会資料」(2026年7月29日)。
  3. 会社開示 アドバンテスト「FY2026 Q1 決算説明会ノート」(2026年7月29日)。
  4. 会社開示 アドバンテスト「決算情報」。Q&Aは情報基準時刻に公開確認できなかった。
  5. 会社開示 TSMC「Second Quarter 2026 Earnings」(2026年7月16日)。
  6. 会社開示 Teradyne「Reports Second Quarter 2026 Results」(2026年7月28日、米国東部時間)。
  7. 分析 本文の前年比、修正幅、進捗率、実効税率は上記会社開示からの計算。会社予想や市場コンセンサスではない。